エッセイ

NHK なぜ再放送しない特番「海」 人類の叡智が得られなかったための絶望からか

地球温暖化の行き着く処

私が環境問題に関心を深めエッセイを書き始めたのは19年前、NHKが特別番組で3~4回に分けて報道した「海」に衝撃を受けたためである。
この番組のストーリーは「このまま温暖化が進むと世界の気象は劇的に変化し、 突如として氷河期に入る」で締めくくられている。(アメリカSFデイアフタートゥモローが映像化している) その要因は大陸の陸沿いの深海で形成され2000年に一周する塩の道がズタズタに切れてしまった、そのため地球を温めていた大自然のサーモスタットが 失われた結果である...と過去形での報道だった。
絶望的内容のためかアナウンサーは番組の最後に「人類には叡智がありますか ら...」と視聴者を慰めて結んでいた。

それから約20年、この番組の筋書き通りの異常気象が世界各地で生じている 「止まない雨」「降らない雨」が集落を崩壊させ多くの生命と農地を奪っている。 局地的異常気象は番組と寸分狂う事無く進行しているまだ可能性を信じている私は何回もNHKに対し再放送を求めたが回答は得られなかった。製作したスタッフはこれからの地球を知っているはずである。
2年前、広島で毎時130mmの集中豪雨が3時間続き、一瞬にして40名近い犠牲者と多くの怪我人を出した災害に対しても、気象庁は数時間先の予報すら出す事が出来なかった。
今回線状降雨帯により福岡、大分県を襲った雨も、毎時50mm~100mmと息も出来ない豪雨で朝倉地区を中心として村落を崩壊させている、山津波と私は呼んでいる。(因みに雨量1mmとは1m²に1ℓの降雨である) 国土の70%が山の国日本には広島と同じ地形と土質の場所が2万5千カ所あると国土交通省は発表している。

異常気象の原因の全ては温室効果ガスにより、海水温を上昇させてしまった結果である。
昨年インド南部の町々では気温が50°Cを越えた、道路は溶け、インフラを壊し、 一日で600余名の生命を熱中症で失っている。 インド洋の海水温度の上昇による悲劇である。インド洋、東シナ海で発生した大量の水蒸気が偏西風に乗ってユーラシア大陸の大平原を通り、日本に次々と雨雲を運んでいる、これが線状降雨帯のメカニズムである。 その結果日本列島は南太平洋からの台風、インド洋、東シナ海からの雨雲の襲来と2ルートからの豪雨と強風のターゲットになっている。

私がエッセイを書き始めるまでは海水温の上昇は水深20m~25mと発表されていたが、今では100mまで20°C以上に上昇させている、そのため台風、 豪雨へのエネルギーの補給量は止める事が出来ない状態に進化している。

気象庁、国土交通省は常に「想定外」と地震や台風、火山に対して表現するが、 温暖化による豪雨は想定外ではない。人類が森を倒し、多大な化石資源を惜しみなく用いたためである。 今や人類の想像力をはるかに超えたAI(人工頭脳)に、愚かな権力政治に左右されない予報と対策を任せたらいかがだろうか。 NHKが再放送を拒み続けているのは劇的変化によって、氷河期に向かってのストーリーがあまりにも正確な報道だったため、絶望が間近に迫っているのではと私は推測している。
「明日地球が滅びようとも私達は今日リンゴの木を植える」は、医師を育てるための有名なフレーズだが、私はリンゴではなく杉の6倍の速さで成長するCO2吸収マシン桐に換えて絶望と闘いたい。
環境対策において我が国は主要58ヶ国中53位である事実を知る国民は少ない。メディアの委縮によるものである。

2017年7月12日
黒岩陽一郎

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