エッセイ

1 分間で東京ドーム3個分の森林が失われている
居場所を失ったウィルスの逆襲が始まった。

近年様々なウィルスによる伝染病がアフリカ大陸から発生し人類に恐怖を与えている。
原因は地球温暖化による蚊の大量発生と、交通機関の発達によるグローバルな保菌者(人類と貨物)の大量移動にある。
更に究明すれば森林喪失によりウィルスの棲みかが失われているためとも言われている。
地球上に生息している生命体の種類は、微生物までカウントすると70万~80万種類と伝えられているが、そのほとんどが森林と海に生息している。
如何なる生命体もそれぞれの役目を持っており、無駄な生命は無い。
人類の生命を一瞬にし て奪うシアン(トリカブト)の様な猛毒を持った植物も多いが、その毒を媒介しているウィルスも生息し、生命の多様性をバランスさせている。
蚊も例外ではなく、森林の中の多くの生命を存続させる重要な種の運搬の役目を果たしている。
人類の一方的な都合で森林を伐採する事により、森林の秩序が崩れ神秘的な聖域が壊され、森林の持つ治癒力が失われる.
そのためエコロジーが消滅して行く森林喪失のメカニズムを我国のブナ林、熱帯雨林の巨木を例にして説明したい。


〈地球〉
表面積 5 億km²、陸地は僅30%その 40%が温暖化により砂漠化に向かっている

我国の森林の母は橅(ブナ)林
我国の森林面積は2500万ha、国土の70%である。
但しその40%~60%が戦後 植林された米松、米杉で占められているため、屋久島の様な自然森林による聖域となっていない。
植林された杉林は昼も暗く多くの生命を育んでいない。
保水力も無く、せせらぎも作らず地下水を枯渇させ、微生物による活動もさせない、どんぐりも落とさないから野生動物も近寄らない、いわば森林の砂漠とも言える孤独な樹群に過ぎない。
数年前茨城県の鬼怒川が氾濫した折り、「ブナの樹の保水力」なるエッセイをお届けした。ブナの樹は成木になると1本でドラム缶1、5本分(300l)の水を体 内に蓄えている。
渇水期になると地下水に水を供給し、せせらぎの水を絶えさせ る事なく、多くの生物に水を与え、秋にはたくさんのドングリを落とし、山に棲む動物、昆虫、微生物に至るまで生命体を育んでいる。
正に森の母なる存在である。
日本の先人達はこんなブナの恩恵を知らず、生育が遅く見た目に悪いから建材にもならないと決めつけ、木では無いとの屈辱の字「橅」と名付け、戦中ことごとく切り倒し燃料にして消滅させてしまった。
山の植物が減り、渇水期せせらぎに水が流れなくなり、猪、猿、熊、鹿、ハクビ シン、イタチ等が町や村に出没し人類への反逆が各地で始まっている。
ブナ林を 再生させる事で、治水ダムを造る必要も無く、森林を多くの生命体で形成するエコロジカルな聖域に戻す事が出来る。

熱帯雨林の母は巨木
巨木には幾多の種類がある。アフリカ、マレーシア、ボルネオには我国のブナと 同じ巨木が多くの生命体を守っている。
胸高直径 1m を程になると次々と倒され、主にヨーロッパ、日本に輸出されている。森林王国日本でありながら自国の木材に手を付けず、巨木の 20%を輸入して森林を蝕んでいる。
再び成木になるのには 100 年の歳月を要する巨木が、人類の身勝手な商業主義により次々と倒され、大型ブルトーザーで森林を倒し、道 を造り、港に運ばれている。
森はズタズタに分断されている。
林業者は貧しく再 び巨木になるために長い年月を必要とするため、焼き畑農業を始める、遊牧をする、木の芽迄食べ尽した後にスコールが襲い表土を流し、砂漠化を促進している。
このスピードは 1 分間に東京ドーム3個分とも計測され、陸地の40%が砂漠化に向かっている。

ウィルスの逆襲
今人類を襲っているウィルスによるデング熱、エボラ出血熱、ジカ熱、鳥インフ ルエンザなどのウィルスは森林の中での居場所を失って、山に入る人々の身に 木材に寄生して、村や町、海外へ移動し世界中を汚染する。これがウィルスの人類への反逆である。
我国においては戦後植樹した米松、米杉は伐採し住宅建設、又バイオマス発電に 用いて一掃し、跡地にはブナを中心に広葉樹を植え育て自然林に戻す事で、エコ ロジーな森林を取り戻す事が出来る。
野生動物を森に戻し天然のダムとして治 水にも役立つ。

失った森林は桐(Paurownia)で修復
桐は6年~10年の速さで巨木になる。私はCO2吸収マシンと呼んでいる。
建材にした場合、天然の断熱材、耐火材として高価で販売する事が出来、林業従事者を豊かにする。
熱帯雨林の砂漠化を止めるには最も適切な方法と思われている。
森林は人類にとってもウィルスにとっても偉大な母であり。ウィルスの逆襲を、 武器を持って止める事は不可能だ。
ウィルスの人類への反逆を人類への警告と受け取るとすれば、温暖化による世界の気象の劇的変化(たとえば氷河期突入)であろう。
アメリカSF映画「ディアフタートゥモロー」に映かれている如く突如として、都市を雪と氷で覆う変化であり、我国NHKも15年程以前の特別番組「海」で4回に渡り氷河期突入の恐怖を報道している。
時を経て再放送を要求した私に無言を続けているのは、報道通りの異常気象が生じているため、現時点での再報送は社会を深刻にするため慎んでいると私は 推測している。
表記した通り地球は表面積僅か5億km²の小さな惑星である。
陸地は30%、その40%が砂漠化に向かっている。
ウィルスにとっても、人類 始め多くの生命体にとってもサバイバル(生き残り)ゲームに入っている。
愚かな人類の責任は余りにも大きい。

2018年5月1日
黒岩陽一郎

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